本サイトは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の医薬品等規制調和・評価研究事業における研究開発(研究開発代表者:国立病院機構名古屋医療センター 齋藤俊樹、研究開発期間:第3期 令和7年度~令和9年度、第2期 令和4年度~令和6年度、第1期 令和元年度~令和3年度)」の一環として整備を推進しています。
第3期(2025年度)「市販後安全対策のためのFHIR・CDISC・SS-MIX2連携による標準化RWD基盤構築と実装研究」
背景
医薬品等の市販後安全対策において、電子カルテ(EHR)等に蓄積されるリアルワールドデータ(RWD、実臨床環境で得られる多様な医療健康情報)の活用は喫緊の課題です。しかし国内では、医療機関ごとに情報システムやデータ形式が異なり、複数施設のデータ統合・解析が困難なため、RWDの市販後安全性評価(PMS、Post-Marketing Surveillance)等、薬事規制への本格的な利活用は限定的です。国内のSS-MIX2標準化ストレージ(国内で普及する標準的な診療情報格納形式)、国際的なHL7 FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources、医療情報交換のための次世代標準規格)、CDISC SDTM(Study Data Tabulation Model、臨床研究データ申請・解析用の標準モデル)は普及しつつありますが、これらの標準間の連携は不十分です。特に迅速性が求められるPMSにおいて、医療現場のRWDを規制当局が求める品質と形式(CDISC SDTM)で効率的に利活用するための体系的な方法論の確立が急務となっています。本研究は、この課題認識に基づき、国内の実情と国際標準の整合性を図り、RWDの市販後安全対策への利用を促進する技術基盤開発の必要性に応えるものです。
目的
本研究の最終的な目的は、医薬品等の市販後安全対策の迅速化・高度化に貢献することです。そのために、国内で広く利用されるSS-MIX2ストレージと国際標準FHIRを活用し、市販後安全性評価に利用可能なCDISC SDTM標準準拠の高品質RWDを効率的に生成・活用するための技術的フレームワークおよび具体的な実装パイプラインを開発・実証します。具体的には、(1) FHIRとCDISC連携による標準化実装フレームワーク(FHIR準拠国内EHR連携基盤プロジェクトであるJASPEHRと連携、初期はPMSに重要な有害事象(AE)データにフォーカス)の開発・実証、(2) SS-MIX2ストレージからのCDISC準拠RWD生成パイプラインと品質保証(QA)方法論(PMS等での利用に耐えうる信頼性確保を目指す)の開発・実装、および(3) ローカルデータの標準コードへの変換促進の3項目に取り組みます。これにより、多様な医療情報システム環境下での標準化・相互運用可能なRWD基盤を構築し、本邦PMSの迅速化・高度化とRWD利活用促進を目指します。
研究方法
本研究は、上記目的達成のため、以下の2つの研究開発項目を連携させ推進します。研究代表者のAMED先行研究(CDISC利用促進)の成果と経験を基盤とし、市販後安全対策に必要なRWD標準化に精通した、データ標準(CDISC, FHIR, SS-MIX2, JASPEHR)、EHR, NCDA, DPC等のRWD/大規模データベース、生物統計・品質保証の専門家から成る強力なチーム体制と広範なネットワーク(NHO, JIHS, 臨床研究中核病院, UMIN)を活用します。
研究開発項目(1)FHIRとCDISCの連携によるRWD標準化と市販後安全性評価基盤の実装: 国内で実装が進むJASPEHRシステムと連携し、FHIR QuestionnaireリソースにCDISCメタデータ(SDTMマッピング情報、標準用語参照等)を埋め込む仕様を定義します。これにより、EHRから収集したデータ(初期はAE)を自動的にCDISC SDTM形式へ変換するフレームワークを開発・実証します。協力医療機関(JIHS等)で実装し、品質と有用性を検証します。
研究開発項目(2)SS-MIX2ストレージを活用したCDISC準拠RWD生成パイプラインの構築と品質保証手法の開発: 国内で広く普及するSS-MIX2ストレージ(NHOのNCDAモデル参考)を対象に、既存データをCDISC SDTM形式へ変換する自動化パイプラインを構築します。CDISC適合性チェック、データ品質チェックを含む体系的なQA方法論を開発・実装します。初期は血液がん領域データで実証し、段階的に拡張します。
研究開発項目(3)ローカルデータの標準コードへの変換促進:
RWDをPMSで活用できる状態(PMS-Ready)にするために必要な、YJ(薬剤)、SDTM、MedDRA、WHODrugなどの標準コード等へのマッピングツールの開発を行います。またこの作業はRWDが生まれる医療機関側で実施する必要があるため、まずは大学病院やナショナルセンターといったアカデミアで、その標準の理解・導入のためのセミナー開催、教育資料作成を行います。
3項目とも3カ年計画で実施し、1年目に設計・基盤構築、2年目にパイロット実装・改良、3年目に拡張・検証・成果普及を行います。研究期間を通じて、MedDRA等の国際標準用語対応を実装・検証し、最終的に、開発したフレームワークとパイプラインに関する「普遍性の高い仕様書・手順書等」(医療機関での標準化実装とPMS等でのRWD活用を支援する)を作成・公開します。PMDA職員(オブザーバー参加)やJ3C等ステークホルダーとの連携により、成果の実用性と規制への反映可能性を高めます。
第2期(2022年度)「アカデミアにおけるCDISC標準利用促進に関する研究開発」(成果報告書)
1.基本構想
(1)研究開発の目標・ねらい
1) 本研究の目的
本研究開発によりアカデミアにおける負担を軽減し、CDISC標準活用が広範に広がることにより、臨床研究遂行、エビデンス取得のスピードアップ・効率化、承認申請・審査の円滑化、最終的には新しい医療技術の適正かつ早期の臨床応用及び実用化に結びつくことが本研究開発の目標である。また諸外国においても標準化は良いと分かりつつもアカデミアにおけるCDISC導入は極めて限定的に行われているのが現状であり、日本が他国に先駆けてアカデミアでのCDISC普及およびRWDへの適用が進むことにより、世界に先駆けた国際規格・基準の策定の提案等につながることもねらいの一つである。
本研究ではCDISC標準準拠データ作成におけるアカデミア施設間情報共有・連携を視野に、CDISC対応されたaCRFなどRWDを含む臨床研究に関する資料・情報の提供体制としてCDISC情報共有ポータルサイトの拡張・運用、および教育コンテンツおよびツールの提供体制の提言・構築を行う。
2) これまでに得られた成果と本研究の特色や優位性
我々は臨床研究・治験で実際に使用されたaCRFの情報提供を含め、CDISCに精通したアカデミア等のノウハウを可能な限り他のアカデミア施設に広く情報提供するために2019年度AMED研究開発にてインターネット上にアカデミア間情報共有ポータルサイト(aCRF.jp)を構築した。日本のアカデミアにおけるCDISC対応の底上げを目的にaCRF実例、CDISC関連ツール、CDISCに関する情報リンクが現在公開され、制限なく利用可能なウェブサイトとしてパイロット的に運用が開始されている。このポータルサイトはCDISC本体のウェブサイト(英語)との相互リンクを既に行っているが、予算的な制限より現在アップロードされている日本語コンテンツはブラウザの翻訳機能を用いても他の言語に変換表示することが出来ない仕組みとなっている。
また2019年度AMED研究開発においては製薬企業、CRO、アカデミアへのアンケート調査により国内のアカデミアにおいてCDISCは未だ十分には普及しておらず、リソース、人材の欠如が最大の問題であり、教育の機会を求めている一方、製薬企業においてはAROへの期待が一定程度存在することが分かっている。本研究はすでに論文化された、2019年度AMED研究開発の継続研究開発として策定されており、すでに助走がついていることが優位であり、研究参加者がCDISCに造形が深いと共に広く周知可能なネットワークに属していること、またCDISC本体とも連携可能な状態にあることが特色である。
3) 本研究期間での達成目標
・薬事承認のための治験のみならず、観察研究やレジストリなどリアルワールドデータ(RWD)へのCDISC標準の適用具体例の公開を含むポータルサイトを多言語対応等の拡張を行い運用する。
・アカデミアで導入を推進するため動画を含む分かりやすい教育コンテンツの作成・提供およびCDISC標準でのデータ蓄積を行った際に利用できる汎用プログラム、ツールを開発・提供体制を構築する。
・データモニタリングや統計解析に関するすでに存在するCDISC標準化の具体的、定量的なメリットを整理し、アカデミアに広く周知する。
第1期(2019年度)「アカデミアにおけるCDISC標準利用推進のための施設間連携に関する研究」(成果報告書)
1.基本構想
(1)研究開発の目標・ねらい
本研究の目的はアカデミアのCDISC標準導入に関する課題・情報を整理した上で解決案を提案すること、およびDCを有する施設と他の施設との施設間連携体制構築の一環としてアカデミア間情報共有ポータルサイトの構築を行い「既にマッピングされた事例」をDCを有する施設より登録・公開し、他の施設がそれを利用することにより広く連携体制を構築することである。
(2) 研究開発の背景
CDISC標準を実務で用いているアカデミアは僅かであり、データセンター(DC)を有する施設に求められる機能及び施設間連携の際に想定される課題、データ作成から企業等への提供までの過程でアカデミア内や施設間で共有すべき情報の整理がなされていない。また実務としては各入力項目にCDISCで定義された変数と既定の選択肢を当てはめていくマッピング作業が中心となるが、非常に時間がかかり、正しく行うために必要なCDISCに関する豊富な知識と実務経験を持つ人材の確保は困難である。
これを解決するためには既にDCにてCDISC標準が日常業務に導入され、CROに全てを委託することなく、CDISC標準を理解しているアカデミアが中心となり、CDISC標準導入に関する課題・情報を整理した上で、提案としてまとめることが必要である。
またマッピング作業を各々のアカデミアで行わなくてもCDISC標準を使えるようになるためにはパブリックドメインに「既にマッピングされた事例」が大量に存在することが必要である。正しい変数と選択肢にマッピングされた症例報告書の実例が十分に利用できれば、それを模倣するだけで全てのアカデミアにおいてCDISC標準でデータが扱えるようになる。
(3) 研究開発の将来展望
本開発研究の実施により、CDISC情報の共有化が実現し、アカデミアでのCDISC対応の底上げが図られる。具体的には、CDISCを業務レベルで使用し、CJUGおよびJ3Cの活動を通じてCDISC関連の最新情報に触れているアカデミア等が一同に会し、CDISC標準導入に関する課題・情報を討議・整理した上で提案が報告される。またCDISC標準で既にマッピングされた臨床研究・治験の情報を誰もが利用できる仕組みが作られることにより、どのアカデミアであってもCDISCの詳細な知識が無くとも、それらを使用し速やかな導入が可能となる。このように本開発研究の成果により日本全体のアカデミアのサポート体制についての提案がなされると同時に、サポート体制の一案が試行される。CDISC標準をベースに業務が行える状態にするということは、データの二次利用も含め品質の向上とコスト低下の両方が同時に見込めるインフラを整備することであり、これが実現すると長期的な国力上昇に直結する。この仕組が更に拡大し日本のアカデミアがCDISC情報をパブリックドメインに置くことが常態化した場合には、日本語でのリソースが多くなるため、世界における日本の優位性が高まる。日本が世界に先駆けてアカデミアが日常的にCDISC標準で仕事をするようになることは、戦略的にも極めて大切であり、日本の医療分野において大きな利益をもたらすと考えられる。
2.研究開発の内容
(3)アカデミア間CDISC情報共有ポータルサイトの構築
2019年度:データセンターを有する施設のノウハウを可能な限り国内の他施設に広く情報提供するためにインターネット上にアカデミア間情報共有ポータルサイトの構築に必要な仕様策定を行う。
2020年度:データセンターを有する施設のノウハウを可能な限り国内の他施設に広く情報提供するためにインターネット上にアカデミア間情報共有ポータルサイトの構築を行う。
2021年度:ポータルサイトのコンテンツとしてCDISC標準導入において正しく行うことが最も困難なマッピング作業を軽減するために、既にSDTM変数がマッピング済みの症例報告書(aCRF; annotated case report form)等を公開する。またそのマッピングが正しく行われているかどうかをコミュニティで品質管理していくプラットフォームをパイロット的に運用開始し、実際に試験にて使われたaCRF等のデータ登録を行う。